ビクトリア・ハーバーはサンフランシスコ、リオデジャネイロとともに、「世界の三大自然港」に数えられています。香港が誇る最高の資産はそこに住む人々ですが、その次に挙げられるのがビクトリア・ハーバーです。貨物船や客船が行き交う自然の深い港で、船の通過数によると、世界で最も忙しい港です。香港の貨物の総取引の重量の90%は、ビクトリア・ハーバーを行き交う船によって扱われています。
香港は今では国際金融センターですが、18世紀まではさびれた漁村にしかすぎませんでした。地理的に中国への入口のような位置にあるため、当時の香港は、外国の貿易船が広州へ行く途中で、悪天候をさけたり、水を供給するための港としての価値しか認められていませんでした。
香港の急速な大変身は、18世紀中ごろにイギリス領になってからで、最初は港として、その後、19世紀から現在まで貨物集散地として繁栄しました。
香港は珠江デルタの入口にあり、急速な経済発展が進行中のアジア太平洋地区の中心に位置しています。また、大平洋を渡る巨大な船から、珠江を下ってくるより小さな船まで、様々な船が集まる港でもあります。ビクトリア・ハーバーはシンガポールと上海の間の唯一のモダンで設備が整った自然の深水港なので、香港は南中国の海洋貿易の中心地となっています。
ビクトリア・ハーバーが忙しいのはそのためです。珠江デルタと香港の間を往来する高速船は、香港とマカオの間をピーク時は15分毎、一日平均160回走っています。2000
年は800万人以上が、チムサアチョイのチャイナ・フェリー・ターミナルか、香港島セントラルのマカオ・フェリー・ターミナルから、ジェットフォイル、ホーバーフェリー、またはカタマランで、マカオまたは香港本土へ行きました。毎日600隻近い船が、ビクトリア・ハーバーに入港または出航しており、一日平均1万隻がビクトリア・ハーバーに停泊中または通り過ぎています。
香港には一日平均で250隻近い海洋船、1万3000隻の海と川向けの商業船が停泊しており、約1万隻が通過しています。ビクトリア・ハーバーでよく見かけられるコンテナ船を含む海洋船は、新界西部のクワイチュンに停泊します。
香港の港は貨物処理の効率が優れており、しかも、停泊料金も世界で最も低い部類に属しています。コンテナ船は通常、停泊から10時間以内にコンテナの荷降ろし、船積みの作業を終え、出港します。それ以外の貨物船は、錨を下ろしてから平均1.8日で作
業を終えることができます。
新界のクワイチュン(葵涌港)の港は2002年、TEUと呼ばれる20フィートのコンテナ貨物1億7800万個を処理し、世界で最も忙しいコンテナ港となりました。クワイチュンには、船の修理のための大規模な乾ドックもあり、石油掘削船を含むありとあらゆるタイプの船が入港しています。
ビクトリア・ハーバーに浮かんだブイに停泊する船もあります。ブイは137から183
メートルの船に適しています。合計62個あり、香港政府の海事処が管理しています。はしけからの貨物の船積み、荷下ろしは通常、政府が運営する公共貨物エリアを使います。
香港と珠江デルタ沿いの港の間の貨物輸送には、様々な水路が使われています。
香港は中国と周辺のアジア諸国の間の地理的な中心地で、しかもシンガポールと上海の間の唯一の現代施設が整った深水港なので、中国と世界各国の間の貿易にとって重要な船積み、貨物収集センターでもあります。
ビクトリア・ハーバーの日々の管理、運営は、香港政府の海事処が担当しています。海事処の最も重要な任務は、港と領海内での作業が安全に行われるようにすることです。港と領海内を警備する海洋警察の任務は、海からの密輸や密入国を止めることと、領海周辺で捜査、救助活動を行うことです。
香港は質の高い船の登録地として定評があります。香港で登録した船は以前から、どこの国でも港湾当局の検査官に足留めさせられる比率が非常に低く、その記録を現在も維持しています。香港で登録している船は2002年2月現在、これまで最高の1億6600
万トンに達し、世界のトップ10のひとつとなっています。 |